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Wine Column:♯4 ワイン保存アイテムの利用について

2024.02.28 コラム

アンチ・オックスとコラヴァンの併用に、ワインセーブ・プロも追加併用した記録


近年、レストランやワインバーでは必需品化しつつあるコラヴァン。大気中にも1%ほど含まれる「アルゴン
」をボトル内に抜栓せず注入することで、比重の重いアルゴンが液面に沈み、ワインと酸素の接触を無くす、
いわゆるワイン保存アイテムの一つ。マサチューセッツ州バーリントンに本拠地を置く非上場企業のプロダク

ツで、2013年の発売当初は猜疑心をもって見てしまう方も多かったことと思いますが、今となっては「コラヴ
ァンは使わない」というポリシーがない限りは取り入れている店舗がほとんどではないでしょうか。
 

さて、ここではその構造や原理、使い方には触れませんが、メリット・デメリット、応用、また、ワインの
輸入元でもある富山県のヴィレッジ・セラーズ株式会社の同じくアルゴンを使ったプロダクツ「ワインセーブ
・プロ」との併用の利点について書きたいと思います。ワインセーブ・プロは通常抜栓後、500mlペット程の大
きさの単独のガスボンベから、瓶口にワンプッシュ、約1秒アルゴンを注入するだけ。

日本では2019年6月にアルゴンが食品添加物として新規指定されましたが、8年に渡り有益なデータを集め、申

請を続けてきたのも同社。


ワインの酸素との接触やいわゆる「ワインがひらく」という状態に対しては皆さま各々の判断軸があると思い
ますが、あくまでわたくし個人が感じて実践してきたことです。


まず、コラヴァンの最大にして唯一の利点はとにかく酸化からワインを守れることだと思います。この能力
は後述のワインセーブ・プロよりも、更に長い期間多くのワインで酸化を防ぐことができると言えるでしょう。
それに対して多くの利用者の頭を悩ます事項は下記のようなものがあると思います。


1 ガスやニードルの運用コストが高い(導入時の本体代も高い)
2 サーブに要する時間がかかる(所作的に格好もつかない)
3 閉じたワインは閉じた状態で出すことになる
4 古酒などで、コルク片がワインに落下する
5 パニエに入れた状態で本体を装着することがあまり現実的でない(立てたり横にしたり澱が舞う)
6 ニードルを都度洗浄することは現実的でなく、厳密に言うとその前に使ったワインが混じるのではないか、

 また、ボトル内のワインに触れる針先の衛生面も気になる。


それぞれの環境や使い方で他にもあるかと思いますが、ワインセーブ・プロ導入前の対処は以下の通りでした。


1 価格転嫁
2 解決策がなく、個人的にはこれが一番の悩みでした。お客様の滞在時間も、食事のペースも、従業員の労働
 時間も限りあるもので、わずかな時間だとしても生産性が悪い。
3 一度抜栓して、飲み頃近くと判断したら打栓してコラヴァン利用。もしくはデキャンタ後、瓶に戻し打栓し
 てコラヴァン利用。
4 古くて弱くなったコルクは抜栓してしまい、何らかの新しいコルクを打栓しなおしてコラヴァン利用。
5 コラヴァン利用後の保管も提案も立てること一択。
6 洗浄を極力多くする。(これも作業増加につながる)

ということで、結局のところ抜栓してしまって、美味しいうちに売ってしまうことがベストだとの結論。コラ
ヴァン頻度も落ちていましたが、ワインセーブ・プロとの併用で全問題解決できました。


1 コラヴァンが1杯のサーブでおおよそ91円のガスボンベ代がかかるのに対して、ワインセーブ・プロは20~30円。
(コストは購入価格により変わるのと、コラヴァンはその他にニードル代、本体代がかかります。

 ワインセーブプロは生産ラインの安定化が実現したため2024年4月より大幅な値下げを同社が発表済み。)

2 ちゃんと抜栓作業ができて、通常のサーブスピードで提供ができます。アルゴンの注入作業は、近くにボン
 ベがあれば3秒ほど。ワインによっては都度注入する必要もなく、bar九では営業終わりだけ注入するものも
 あります。
3 抜栓するわけですので、状態を見極め、酸化を避けるタイミングを選べる。
4 抜栓するわけですので、問題なし。抜栓後のキャップはアンチオックスを推奨します。より酸化が早い古酒
 は注入量を増やしています。
5 横置き保管のものもそのままパニエで横のまま使えます。横の場合液面面積が増えるため注入量を増やしま
 す。

6 洗浄するものと言えば、同梱されているシリコンチューブくらいですが、ワインにも直接触れません。
 ワインセーブ・プロはスパークリングにも使え、食品の保存容器などに注入すれば、食品の酸化防止にも使
 えます。結果としてコラヴァンを利用するワインは以下のような条件になりました。
 ・比較的、澱の心配が少ない。
 ・コルクが若い。
 ・コストと時間をかけてもよい価格帯のワイン。
 ワインセーブ・プロの注意点としては、
 ・注入量が少なければ酸素に触れる可能性がある
 ・酸素が液面に触れないだけで、ボトル内に酸素はあるわけですから、揺らしたり、横にすれば酸素に触れ
  る可能性がある。
 ・上記理由により、アンチオックスとの併用を推奨。
 

 今回はコラヴァンとワインセーブ・プロについて実践していることを寄稿させていただきましたが、結論と
して、コラヴァンのほうが酸化に対する信頼性は高く、ワインセーブ・プロはコラヴァンのデメリット解消の

汎用性が高いと言えるでしょう。また、ワインセーブ・プロはハードウェアとなる本体が必要ないため、未導
入の店舗や家庭でもすぐに取り入れられるので一度試してみてはいかがでしょうか。



Columnist

木下 隆一
前回のオーストラリアワイン産業のコラムの流れから、今回は株式会社アスウィンの主力ブランドで
ある、ワラムンダ・エステートについて寄稿させていただきました。
当主のご長女、オリヴィア氏へのインタビュー時間を設けさせていただきましたが、対処療法的な様々
な醸造のノウハウをヒアリングしきるには何倍もの時間が必要でした。2013年からの蓄積データしかな
い中で毎年一貫したスタイルを構築することは、かなりのセンスが求められることだと思います。
私の周りにもあからさまなブルゴーニュラヴァーが多いですが、このワラムンダ・エステートのエレガ
ンスは受け入れて頂けることばかりです。まだ飲んでいない方には一度おすすめ致します。


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