Wine Column:♯1 オーストラリアワイン産業の概要
オーストラリアワイン産業の概要
オーストラリアと言えば約769万k㎡というヨーロッパ全土の7割に当たる広大な国土です。
ワイン産地のほとんどは、(南東部の)南オーストラリア州、ニュー・サウス・ウェールズ州やヴィクトリア州等に集まっていて、飛び地的に西オーストラリア州のパース近郊で有力な生産者たちが素晴らしいワインを産み出しています。114あるG.I.(地理的呼称)はそれぞれ土壌・気候・品種などが様々で各地で個性豊かな、高級ワインから低価格ワインまで生産されています。
各産地の土壌や特性など詳細や、歴史や変革を掘り下げると千言万語費やすことになりますが、ここではいま認識すべき項目に絞りました。
・「オーストラリアワイン産業の実情」
・「小規模生産者の数多くの試みと課題」
・「冷涼産地への世界的な注目」
【オーストラリアワイン産業の実情】
一大ワイン産地として認識されているオーストラリアですが、実のところ、生産者は2014年以降減少を続けていて、栽培面積も今後は拡大することはないと考えられています。それは一言でいうと衰退産業としての認識されることとなります。
ワラムンダ・エステート/WarramundaEstateのように有力な生産者が造り出すワインはもちろん残っていくにしても、ワイン産業全体としてのとして流通量の減少を否定できないでいる状態です。
原因のまず一つに、温暖化による気候変動があります。干ばつや森林火災の多発に対して、「水」の恩恵が著しく低いという問題があります。
灌漑用水を使うとコスト高になり、安価なワインは世界との価格競争に負けてしまいます。そうして中、勝ち残るワインは資本が潤沢な超大手による大量生産ワインとワラムンダ・エステートのような中高級ワインです。
オーストラリアワイン産業の概要を語るときに必ず出てくる比較ですが、2230あるオーストラリアワインの生産者のうち、ブドウ破砕量5000t以上の生産者は36社。このたった36社で全体の生産量の90%を占めます。一方、ブドウ破砕量500t未満の小規模な生産者は、造り手全体の8割を占めますが、全オーストラリアワイン生産量の3%にも届きません。このことで大手の量販ブランドワインと小規模なクオリティーワインの二極化の構図はイメージできると思います。
アコレード・ワインズ社、トレジャリー・ワイン・エステーツ社や、コンビニでもよく見かけるイエローテイルのカセラ・ワインズ社、モエ・エ・シャンドンが1986年に設立したシャンドン・オーストラリアなど、大手生産者も決して無視できませんが、今後のオーストラリアワイン産業の繁栄を左右するのは、数多くの小規模生産者です。
【小規模生産者の数多くの試みと課題】
ナチュラル・ワイン・ムーブメントと言われるように、亜硫酸を極少量に抑えるか使わないワイン、自然発酵、瓶内二次発酵でのスパークリング、混醸または混植混醸、地中海原産品種の採用などそれぞれの小規模生産者の試みは枚挙に暇がありません。
試みやその内容、各産地の個性や独立性は幅広く認識され評価されるものも多いが、問題はいくらで売るのか、どう価格に見合うブランドイメージを形成するのか、それをどこの国が買ってくれるのか。
2021年の輸出総額は前年比4%減。この輸出減は中国との関税制裁にあります。
オーストラリア・中国間のFTAによりワインの関税が撤廃されていたことをうけ輸出全体の40%が中国と、最大のオーストラリアワイン輸出国となっていました。
しかし2020年オーストラリアがCOVID-19の起源調査要求を国際社会に働きかけたことで両国間に摩擦。2021年3月より5年間、2ℓ以下の瓶詰めされたオーストラリアワインに218.4%の関税を課すと発表。それにより中国向け輸出量は37%減となりました。イギリスやドイツへの輸出量が大きくプラスに転じて全体の輸出減に歯止めがかかっています。
【冷涼産地への世界的な注目】
運営可能で現実的な価格決定、個性豊かなワインのプレゼンス、どう購入に結び付けるかを苦心し続ける中、追い風といえるのは冷涼産地への注目。
ブルゴーニュワインやシャンパーニュの価格高騰が著しく、主にピノ・ノワールやシャルドネの代替案が世界中で模索されています。土壌に着目する場面もあれば、気候に着目する場面もあります。ドイツのバーデン地方、アメリカはオレゴン州ウィラメットヴァレーや南アフリカ、日本の北海道でも大手酒造メーカーやブルゴーニュの著名生産者などがワイン事業をスタートさせています。
そんな中オーストラリアには二つの注目される冷涼地域があります。
一つはオーストラリアのずっと西に位置する西オーストラリア州のグレート・サザン。西オーストラリアと聞くと、マーガレット・リバーがまず連想されますが、南氷洋の影響を大きく受けるグレート・サザンは冷涼地として注目され、今後日本でも目にする機会は今よりも増えることとなるでしょう。
それぞれのサブリージョンで気候や土壌など個性がありますがその掘り下げは改めます。
そしてなにより、アスウィンで取り扱うワラムンダ・エステート/WarramundaEstateが位置するヴィクトリア州ヤラ・ヴァレーです。前述のモエ・エ・シャンドン社のシャンドン・オーストラリアが瓶内二次発酵スパークリングの生産拠点にしているのもこちら。ヤラ・ヴァレーはヴァレー・フロアとアッパー・ヤラ・ヴァレー、北部地域と3つに大きく分かれ、標高や気候、土壌などに違いが出てきます。
ワラムンダ・エステートが位置する、サブリージョン「コールドストリーム」はヴァレー・フロアにあたり、冷涼で酸のきれいなエレガントなピノ・ノワールと、ふくよかで果実味豊かなシャルドネやマルサンヌ、またカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーの生育にも向いていて栽培環境は幅広い。
多くのレストランやワインバーではブルゴーニュワインの代替案を模索していると思いますが、ワラムンダ・エステート/WarramundaEstateのワインはまさにそれに当てはまるエレガントさで凝縮されすぎないピュアなワインを毎年生産しています。価格は日本上代価格¥9,000~¥16,500。これは業種により捉え方は様々ですが、ニーズに当てはまり、ブランディングもあいまって、その味わいのみならず価格にも納得する消費者は多い。次号ではこのワラムンダ・エステートのワインのテクニカルな部分とテイスティングコメントを掲載します。
Columnist
GINZA Bar 九
木下 隆一
この度、株式会社アスウィンさん(以下、アスウィン)のウェブサイト上でワインに関するコラムを寄稿させて頂くこととなりました、銀座Bar九の木下隆一です。
ワインをはじめとする酒類のトレンドなどを発信していきます。初回はアスウィンの主力商ワインである、ワラムンダ・エステートが位置するオーストラリアのワイン産業の概要をお伝えさせて頂きました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
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